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個人再生ではいくら返済するの?最低弁済額の決まり方

個人再生最低弁済額と清算価値保障の原則などのイメージ

 

 

■個人再生には最低弁済額がある

債務整理の手段のひとつに個人再生という比較的新しい手続きがあり、借金の大部分を減額してもらいながら残り一定額を定期的に分割弁済していくというものです。

 

返済していく金額を債務者が自由に決められるわけではなく、最低でもこれだけは支払わなくてはならないという最低弁済額は決まっています。

 

■最低弁済額だけを払えばいいわけではない

個人再生は、民事再生法で認められた債務者を救済する手段で、裁判所の許可があると法律で定められた基準である最低弁済額まで借金を減額することができます。

 

つまり、一定の金額だけ支払えば残りの借金を免除してくれる制度です。

 

(1)法律で定められた基準がある

民事再生法231条2項3項で、最低弁済額の基準が指定されています。90%以上の個人債務者は借金の総額は1000万円以下なので、それ以上の借金のある場合はここでは詳細は割愛します。借金額が100万円以下は減額なしの全額支払い、借金額100万~500万円なら100万円まで減額、500万円以上であれば5分の1まで減額されることになっています。

 

例えば、借金が300万円ある人が個人再生する場合には、法律の基準によると返済額は100万円まで減額されます。

なお、住宅ローンの残債務がある場合には、その金額は除外して計算されます。

 

(2)最低弁済額の基準だけでは決まらない

個人再生における返済額は上述の最低弁済額の基準だけで決まるわけではありません。該当する最低弁済額の基準と清算価値を比較して、より高い金額の方が最低弁済額となるのです。

 

ここで「清算価値」とは、自分の財産をすべて処分して現金に換金した場合の価値のことです。例えば、銀行預金、有価証券、保険の返戻金、家や自動車など現金としての価値のことです。個人再生では、最低でも清算価値以上の金額を返済することが要求されています。

 

(3)清算価値保障の原則がある

個人再生には、債権者を保護するため最低でも清算価値を上回る金額を返済しなくてはならないとする「清算価値保障の原則」があります。個人再生の再生計画において債務者が自由に返済額を決めたのでは、債権者の利益が害されることがあります。

 

例えば、自己破産を選択して債務者の財産を処分すれば、債権者は多くの返済を受けられる可能性があります。自己破産しないで個人再生を選択すると家や車などは処分しなくて済むメリットが債務者にはあります、そこで、自己破産する場合よりも債権者が多くの返済を受けられることを保障したわけです。清算価値保障の原則は、債権者の利益を保護するための原則といえます。

 

清算価値保障の原則は、民事再生法174条2項4号に規定されていて、これを満たさない再生計画案は裁判所の許可が下りず借金の減額は認められません。ただし、この原則は個人再生の場合にはほとんど意味がありません。通常であれば債務者は換金できる財産はすべて処分していることが多いからです。

 

(4)清算価値の算定は難しい

会社では財務諸表が作成されているため、民事再生を行う場合に清算価値を計算することはそれほど難しい作業ではありません。ところが、個人の場合は大きな財産があることはまれで、清算価値が問題になるケースはほとんどないのです。

 

ある程度の財産的な価値のある資産があったとしても、適正な評価を行うのは簡単なことではありません。個人が所有する資産の清算価値を算定したい場合は、プロである弁護士に依頼するといいでしょう。

 

■給与所得者等再生の最低弁済額について

個人再生には、小規模個人再生手続給与所得者等再生手続があり、小規模個人再生手続の最低弁済額については上記の説明のとおりになります。つまり、法律の基準で求めた金額と清算価値を比較して、より高い金額の方が最低弁済額となるのです。

 

これに対して、給与所得者等再生については、もうひとつ以下のような条件が加わります。

 

(1)給与所得者等再生では可処分所得2年分が条件として追加

給与所得者等再生とは、サラリーマンなどの給与所得者が申請できる個人再生手続きの方法です。ただし、サラリーマンでも給与所得者等再生を選択せず、小規模個人再生手続をすることもできます。

 

給与所得者等再生を選択する場合には、債務者は最低でも法定可処分所得の2年分は返済しなくてはなりません。つまり、法律の基準で求めた金額と清算価値を比較してより高い金額の方を決め、さらに法定可処分所得の2年分と比較して高い方が最低返済額となります。

 

例えば、借金額300万円のサラリーマンXさんの場合、所得税、住民税、社会保険料を控除した後の給与収入が年間350万円、生活していくのに必要な最低生活費が年間240万円とします。

 

法律の最低弁済額の基準によると、借金500万円以下なので返済額は100万円に減額されます。ところが、給与所得者等再生を選択すると、350万円-240万円=110万円の2年分、つまり110万円×2=220万円が最低弁済額となります。

 

給与所得者等再生を適用すると、120万円以上増額した220万円を最低限返済していかなくてはならないことになるのです。

 

しかし、この場合300万円-220万円=80万円の分は借金を減額できるということも言えます。

 

(2)給与所得者等再生のメリット

サラリーマンは給与所得者等再生を選択しなければならないわけではなく、小規模個人再生手続を選択することも可能です。個人再生による返済額が増えてしまうのなら、小規模個人再生手続の方が有利だということで選択する人も多くいます。

 

ただ給与所得者等再生には再生計画に対する債権者の決議がいらないというメリットがあります。つまり、債権者の同意は不要で、個人再生の条件を満たしていて、かつ裁判所の許可があれば個人再生を利用できるのです。このことを考慮して、自分にとってメリットの大きい方を弁護士と相談して選択するといいでしょう。

 

■最低弁済額以上の返済は必要か?

個人再生における最低弁済額は民事再生法で定められているのですが、実際に法定の最低弁済額以上の金額を貸金業者等に返済することはあるのでしょうか。

 

法律の定めが優先されるため、法律上の義務以上の支払いをする必要はありません。貸金業者は裁判所の再生計画案の最低弁済金額を超過して、督促したり返還請求したりすることはできないのです。

 

■まとめ:個人再生の最低弁済額

以上見てきたように、債務整理のなかの個人再生について、その弁済額の決まり方についてみてきました。個人再生によって、債務整理ができ、借金額が大幅に減額できることもありますが、個人再生の場合、その弁済額の算定は非常に複雑ですので、まずは債務整理に強い弁護士にご相談頂くことをおすすめいたします。

 

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